僕の家族の墓石には、以下の言葉が彫られています

query_builder 2024/01/24
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僕の家族の墓石には、以下の言葉が彫られています。

風はどこから来てどこへゆくのかわからない。霊から生まれるものも皆同じである。

形や答えのないものを追いかけながら、小さなカケラや空気感を手繰り寄せて、時空間を紡いでいくことが演劇創作の過程ならば、墓石のこの言葉はまさに言い得て妙であり、は僕はいつもしっくりきています。

たまたま同じ時空間に生まれ、袖触り合うも他生の縁、で出会い、同じ釜の飯を食い、お客様に届けるべく稽古を重ねる。
うまくいくこともあれば、そうでないこともある、いやむしろ、うまくいくことの方が少ないのが稽古の現実です。
僕の当たり前と皆様の当たり前の違い、皆様のご都合と僕の都合、それらを埋めるべく時間を割き、互いを理解して折り合い、落とし所を付け、寛容と信頼と相互扶助を貯金していく。
そんな研鑽を重ね、そしてようやくお客様にご覧頂き、演劇は作品として完成します。

とはいえ完成形はお客様それぞれ。
単純なる好き嫌いを大前提に、拡大解釈、妄想、その方が過去に想いを馳せられる、明日への活力に出来る、など、多岐に渡る完成形があることでしょう。

演劇とは、作品の答え(正解)を提示するのではなく、お客さんが答えを作れる土壌を提示することだ。
言語化するのは難しいですが、僕は何となくこんな感覚で作品を作っています。

じゃあお客様に丸投げか、といえばそうではなく、土壌を作るためには丁寧な耕作がもちろん必要!
選んだ畑や肥料を間違えると、お客様には届きません。好き嫌いのご判断さえも出来なくさせてしまう。
だからそこ丁寧に作らねばならない。
それはまるで荒野に吹く風に似ている、そんな気がするのです。

百人一首ショー。
悠久の時の中で、残り続け、数多の人間の無限と夢幻の解釈の中で、生き続けてきた三十一文字。
それらをブイラボミュージカルなりにオマージュして、残り87作もぼちぼち作っていく所存です。
まずは今回の11〜13話が滞りなく終幕したことを演劇の神様に感謝して。

今作が、ご覧頂いたお客様の日々の土壌の一部になっていれば望外の喜びです。

元旦の出来事を含め、人生はいつ何が起こるか分かりません。非日常と隣り合わせの日常を大切に、これからも演劇界の片隅で、その裾野を広げていけたら、と考えております。

冒頭の墓石の言葉、

風はどこから来てどこへゆくのかわからない。霊から生まれるものも皆同じである。

に、僕なりに続きを付けるとするならば、こんな感じでしょうか。

けれどその風は、いつか誰かの頬を撫で、新たな風を生む、きっと。

The百人一首shoW_2024初春、ご観劇ありがとうございました。
関係者の皆様、これまでの道のり、本当にありがとうございました。
また共に作品作らせて頂ける日を楽しみにしております。

2024/01/23
ブイラボミュージカル
滝井サトル


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ブイラボミュージカル

住所:東京都港区西新橋

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